1980年代を疾走したアーティスト、キース・ヘリング。31歳でこの世を去るまでの創作期間はわずか10年余り。ヘリングが残した膨大な作品群は、人々の直感に訴え、未来を夢にかえる狂気さえも感じ、生命の強いエネルギーに満ち溢れています。
夢や希望など自身を外へ解放するポップで多彩なイメージと共に存在する、ヘリングの内面にある狂気、混沌や闇の世界。このような両義性を孕んだキース・ヘリングの作品群は、ニューヨーク・ストリート・カルチャーの伝説という枠組みを越え、1980年代を知らない若者、次世代の子どもたち、そして私たちに多くを語りかけることでしょう。
2008年、キース・ヘリングは生誕50周年を迎えます。昨年オープンした中村キース・ヘリング美術館では、記念特別企画「It
is art as I know it. It is life as I know it.
/ボクが信じるアート。ボクが生きたライフ。―夢・愛・希望そして平和―」展を開催いたします。その一環として、6周年を迎えるアルス・ギャラリーにて主に版画作品を中心にキース・ヘリング展を開催いたします。
鮮烈な色彩。一心不乱に一筆で描ききる迫力を表現すべく、一発勝負で刷り上げられた緊迫感。今回ご紹介する7点の版画作品からも、ヘリングの魅力のひとつであった、高い技術に達した即興性を垣間みることができます。また、和紙やメタルなどの素材に対する試みなどもされていた事もわかります。
今回の展示を通して、ヘリングの息吹に触れて頂くとともに、ヘリングの版画作品の再評価に繋がることを期待しています。
(学芸員 櫻林恵美理)
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